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増額した保険料と損害

明けましておめでとうございます。

今年も岐阜で頑張りますので,どうぞ宜しくお願いいたします。

 

交通事故で過失割合等が争点となると,通常,解決までに長期間を要します。

生活や仕事で自動車を用いている場合,事件解決までの間,事故車両をそのままにすることはできません。

修理や買い替えを検討しなければなりません。

全損であった場合,被害者本人がとりあえず全額自費で車を買い替えて,後に,加害者に請求するという方法もありますが,

金銭面から現実的には難しいケースが多いのではないかと思います。

他方で,車両保険を利用して,自身が加入する損保会社から,車両保険金を受領して,それを買替のための費用に充てる方法もあります。

仮に,この方法を選択した場合,車両保険の利用により,その後の保険料が増額することが考えられますが,その増額分の保険料を加害者に請求した場合,認められるのでしょうか。

交通事故がなければ車両保険を利用することもなく,その利用により保険料が増額したから,当該事故と相当因果関係のある損害であるという見解も考えられますが,東京地裁平成13年12月26日判決は異なる見解を採用しています。

この裁判例は,簡単にいうと,追突されて全損となったため車両保険を利用したところ,その利用により4年にわたり計約32万円の保険料が増額することになるとして,その他の損害とともに加害者に支払いを求めた事案です。

この点,東京地裁は,「原告が自身の加入する車両保険金を受領して早期の被害回復を図るか,被告から適正な損害賠償金を得て被害回復を図るか,は,原告自身の選択の問題であって,前者を選択した結果,保険料が増額したとしても,これをもって,本件事故による損害と認めることはできない。」と判示しました。

車両保険を利用するか否かという状況は珍しいものではないので,このような裁判例があることを知っておくのは有益だと思います。