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被用者から使用者に対する求償

コロナの影響により,テレワーク等を導入する企業が増えており,これまでとは働き方が大きく変わってきてます。

弁護士業界でも,今回を機に,テレワークやテレビを用いた打ち合わせ・会議などの方法がより広がるのではないかと思います。

本日は,令和2年2月28日最高裁判決について,ご紹介いたします。

これは,トラック運転手が,業務中に事故を起こし,被害者遺族に損害賠償した後,自身の勤務先に対して求償請求した事案です。

民法では,使用者が負う責任について,民法715条1項で使用者責任を定めています。

まず,原審(平成30年4月27日大阪高判)は,民法715条1項の規定について,損害を被った第三者が被用者から損害賠償金を回収できない事態に備え,使用者にも損害賠償義務を負わせることにしたものにすぎず,被用者の使用者に対する求償を認める根拠にはならないなどとして,トラック運転手による勤務先に対する求償請求を否定しました。

しかし,最高裁は,民法715条1項の使用者責任の趣旨に照らし,使用者は,被用者との関係でも損害の全部又は一部を負担すべきであるとしました。

使用者責任の趣旨とは,おおまかにいうと,使用者は,被用者を利用して利益を挙げているのであるから,利用に伴う損失についても責任を負うべきであり,また,事業範囲の拡張に伴い第三者への危険性を増大させているのであるから,その危険に対する責任を負うべきといったものです。

このような趣旨からすると,事業の執行で生じた第三者に対する損害については,使用者も相当な範囲で負うべきとしました。

次に,責任を負う範囲が問題となります。

この点,最高裁は,事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者への配慮の程度などを考慮して,相当と認められる限度において求償が認められる旨述べました。

補足意見では,本件で重視すべき考慮要素などが触れられており,とても参考になります。

今回の事案のように,社用トラックに任意保険を付けていないことは少なくありません。

会社の規模や経営状態等にもよりますが,事業継続のために被用者を確保するという点からすれば,保険加入等を考える意味はあるかと思います。