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車両損害における慰謝料

岐阜県下の交通事故件数は昨年度よりも減少している一方,交通事故によりお亡くなりになった方は増加しているようです。

残り1か月ほどですが,車を運転される際には十分注意しなければいけませんね。

ところで,交通事故では,自動車やバイクなどの物件損害のみが問題になることがあります。

事故車両を長年利用しており,愛着が強く,車両損害について慰謝料の支払いを求めたいというご相談をいただくことがありますが,物件損害の慰謝料について,実務ではどのように考えられているのでしょうか。

この点,裁判例は,原則として物件損害の慰謝料は認めない傾向にあります。

これは,修理費用等の財産的損害が補填されれば,同時に財産権侵害に伴う慰謝料も回復されるからと考えられています。

この理由からすると,財産的損害が補填されても,それだけでは,財産権侵害に伴う慰謝料が回復されたとはいえない場合には,例外として慰謝料を認めてよいように思われます。

この点について,東京地裁平成元年3月24日判決が,次のとおり言及しており,参考になります。

「通常は,被害者が財産的損害の填補を受けることによって,財産的侵害に伴う精神的損害も同時に填補されるものといえるのであって,財産的権利を侵害された場合に慰藉料を請求しうるには,目的物が被害者にとって特別の愛情をいだかせるようなものである場合や,加害行為が害意を伴うなど相手方に精神的打撃を与えるような仕方でなされた場合など,被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存することが必要であるというべきである。」

上記判示からすると,被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存する場合には,財産的損害が填補されても,財産権侵害に伴う慰謝料は回復されたとはいえないと考えているように読みとれます。

なお,この事例ではメルセデスベンツという高級車の車両損害に関する慰謝料が問題となったのですが,裁判所は上記「特段の事情」は認められないとして,これを否定しました。

交通事故に遭遇すると,何が請求できるのか,請求できるとして獲得できる見込みはどれくらいか,など様々な疑問が生じます。

疑問が生じるのは当然のことであり,また,疑問はそのままにしておくべきではありません。

お困りの場合には,ただちに弁護士にご相談されることをお勧めします。