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遷延性意識障害と脳死

交通事故による外傷で脳を損傷し,遷延性意識障害すなわち植物状態になることがあります。

この遷延性意識障害は,脳死とは区別されています。

そもそも,人間の脳は,知覚,記憶等を司る大脳,運動等を司る小脳,呼吸・循環機能を司る脳幹の3つから成ります。

このうち,知覚,記憶等を司る大脳の機能の全部又は一部が喪失する一方,呼吸・循環機能という生命維持に不可欠な脳幹の機能は残っている場合があり,この状態を植物状態といいます。脳幹の機能が残っているので,自発呼吸ができますし,また,ケースにもよりますが,植物状態から高次脳機能障害等の状態まで改善・回復することもあります。

これに対して,脳死は,先ほど挙げた3つの機能を全て喪失した状態です。したがって,自発呼吸はできませんし,心臓が動いていても,しばらくすれば停止します。また,植物状態と異なり,改善・回復の可能性はありません。

このように,遷延性意識障害と脳死とは,脳の損傷の部位及びそれによる機能喪失の内容等の点で異なります。

遷延性意識障害,脳死のいずれも,ご本人・ご家族にはとても辛いことであり,その精神的苦痛の程度は計りしれません。

また,遷延性意識障害は,寝たきり状態であるため,医療費や看護費等で多額の経済的負担が生じることが考えられます。

したがって,加害者側により適切な賠償額が支払われる必要がありますが,残念ながら,弁護士が介入しない場合,損保会社からは,適切とはいいがたい金額の提案がなされることも少なくありません。

適切な賠償がなされるためにも,示談書にサインする前には,是非,弁護士にご相談されることをお勧めします。