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法定利率

前回に引き続き,民法改正関連として,法定利率についてお話します。

法定利率とは,法律により定められている利率であり,現行民法では,当事者に「別段の意思表示がないときは,」年5%とされています(現行民法404条)。

この5%の数字は,立法当時の経済状況に照らして定められたもので当時は合理性がありましたが,長年経過する中で,市場の金利との乖離が大きくなりました。

そこで,今回の民法改正では,法定利率を3%に変更されます(改正民法404条2項)。

しかし,将来の経済情勢によっては,高すぎる・低すぎるという批判が生じるたびに法改正していては,不経済です。

そこで,現行の固定金利から変動金利に変更し,3年ごとに法定利率を見直すことになりました。

見直しの際の計算方法については,東京弁護士会法友会全期会・債権法改正特別委員会編著の「これだけは押さえておきたい! 債権法改正の重要ポイント」・115頁~117頁に分かりやすく記載されているので,よろしければご参照ください。

変動する場合に,いつの時点における法定利率を適用すべきかという問題が生じますが,この点については,改正民法により,「その利息が生じた最初の時点における法定利率による」(改正民法404条1項)ことになりました。

ところで,今回の法定利率の改正と関連する問題して,中間利息控除があります。

中間利息の控除とは,交通事故でよく問題となるのですが,簡単にいうと,本来,事故がなかったら得られるだろう収入相当の金員を先に全額もらうと,その金員を運用して利息を得ることができるため,その分の中間利息を控除しましょうというものです。

現在の実務では,平成17年6月14日の最高裁判決により,「損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価格に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならない。」と判示された結果,逸失利益の中間利息控除における利率は,現行法の民事法定利率にしたがい年5%とされています。

しかし,改正民法417条の2が新設されたことにより,中間利息控除における利率は,「損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率によ」るものとされました。

法定利率の変動制が導入される結果,先ほど述べたとおり,まずは利率が5%から3%となるため,逸失利益の側面に着目すれば,賠償額は増額方向に働き,被害者救済に資するといえます。

改正民法施行後は,法定利率の見直し時期を見据えた事件処理が必要となります。